活字に触れて
「初めまして、しらかた ていです。」
「テイですか、珍しいですね。・・・中国人ですか?」
「いえ、純粋な日本人です。」
これまでこんな会話を何度もしてきました。
「てい」という名前は珍しく、祖父がつけてくれました。
携帯やパソコンで「てい」と打っても「禎」しか出てきませんが、
本当は古い字で「示貞」と書きます。
HPの文字はデザイナーさんに作ってもらいました。そんな古い漢字を先週、台湾で見つけました。
台北にある繁体字を鋳造、販売している世界で唯一の活字屋さんへ行きました。
繁体字とは簡略化されていない昔のままの漢字のことです。
店内には活版印刷に使う活字がずらっと並んでいます。
初めて見る光景と一面に漂う鉛の匂いに圧倒されました。
一般にも活字の販売していたので、自分の名前を探してみました。
膨大な数の活字の中から目立ての字を探し出し、文字を作っていく。
昔の雑誌や本、新聞を印刷する時には普通なことですが、私には新鮮に感じられました。
隣にある全く違った意味の文字に「寄り道」しながら、
なんとか自分の名前を見つけることができました。
パソコンで文字を打つのとは「出会い」と「刺激」の量が違い、
ワクワクした気持ちで活字と向き合うことができました。
「禎」ではなく「示貞」という字を見つけられた時は、
「やっと出会えたか」という不思議な感覚になりました。
台湾の街並みは漢字ばかりで頭が痛くなりそうでしたが、
改めて「字」を意識することができた気がします。
白潟 示貞